人気の多肉植物、チワワエンシス。その可愛らしい姿に魅了される方は多いですが、一方で「これって本物?」という偽物の疑惑が常に囁かれています。特に、100均で見かける苗や、よく似た姿のコロラータと桃太郎の違い、さらにルビーブラッシュや旧タイプといった名前が出てくると、混乱してしまいますよね。育ててみたら栽培が難しいと感じたり、なかなか花芽がつかなかったりすると、ますます不安になるかもしれません。また、そもそも原産地はどこなのか、寿命はどのくらいですか?といった基本的な疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。この記事では、そんなチワワエンシスに関する様々な疑問に答え、偽物と本物の見分け方は?という最大の関心事について、専門的な視点から徹底的に解説します
この記事のポイント
- チワワエンシスに偽物疑惑が囁かれる背景
- 100均のチワワエンシスの正体と注意点
- 花で判別する最も確実な見分け方
- 桃太郎やコロラータなど類似品種との明確な違い
チワワエンシスの偽物疑惑とその背景

- 原産地はどこですか?
- チワワエンシス旧タイプとはどんな特徴?
- 100均で売られているものの正体
- なぜ栽培が難しいと言われるのか
- 意外と知らない寿命はどのくらいですか?
原産地はどこですか?

チワワエンシスの原産地は、その名の通りメキシコのチワワ州です。この事実は、チワワエンシスが「原種」であるという非常に重要なポイントを示しています。原種とは、自然界に自生しているそのままの植物のことで、人の手による交配が行われていないものを指します。このため、原種であるチワワエンシスは、園芸用に生み出された交配種とは異なる性質を持っているのです。
原産地の気候は、日本とは異なり乾燥した環境です。この生育環境の違いが、日本での栽培を難しくさせる一因ともなっています。原産地を知ることは、チワワエンシスの本来の性質を理解し、適切な育て方を見つけるための第一歩と言えるでしょう。
豆知識:名前の由来
学名の「Echeveria chihuahuaensis」は、産地に由来しています。多肉植物の名前の多くは、発見された場所や発見者、見た目の特徴から名付けられており、名前の背景を知るのも楽しみの一つです。
チワワエンシス旧タイプとはどんな特徴?

チワワエンシスについて調べていると、「旧タイプ」という言葉を目にすることがあります。これは、特定の品種名ではなく、流通しているチワワエンシスの中でも、より原種に近い特徴を色濃く残している個体を指す通称です。
一般的に市場で多く見かけるチワワエンシスに比べ、旧タイプとされるものは以下のような特徴を持つと言われています。
- 葉が肉厚で、より丸みを帯びている
- 葉の色が白っぽく、粉を吹いたようになっている
- 爪(葉の先端の赤い部分)が鋭く、小さい
- 全体的にコンパクトに、締まった株姿で成長する
ただし、これらは栽培環境によっても大きく変化するため、一概に見た目だけで判断するのは難しいです。言ってしまえば、昔から愛好家の間で受け継がれてきた、野性味あふれる個体群と捉えるのが分かりやすいかもしれません。もし信頼できる生産者から「旧タイプ」として販売されていれば、それは貴重な株である可能性があります。
100均で売られているものの正体

100円ショップ(100均)で「チワワエンシス」という名前の多肉植物を見かけることがあります。安価で手軽に購入できるため、多肉植物を始めるきっかけとして非常に魅力的ですが、その正体についてはいくつかのポイントを理解しておくことが大切です。
結論から言うと、100均で販売されているものが本物のチワワエンシス(原種)である可能性は極めて低いと考えられます。多くの場合、見た目が非常によく似た交配種である「桃太郎」や、それに近い性質を持つ他のハイブリッド品種が、「チワワエンシス」として流通しているのが実情なのです。
なぜ100均では本物のチワワエンシスが少ないのか?
本物の原種が100均に並ぶことが少ないのには、主に「コスト」と「繁殖力」の2つの理由があります。
- 生産コストの問題 前述の通り、チワワエンシスは原種であり、栽培がややデリケートです。生育も交配種に比べてゆっくりなため、生産に時間と手間がかかります。そのため、100円という価格で販売するのは、生産者にとって採算が合わないケースがほとんどです。
- 繁殖力の違い 一方で、「桃太郎」などの交配種は、原種に比べて丈夫で生育旺盛なものが多く、葉挿しなどでの繁殖も容易です。これは、大量生産を前提とする100均の流通システムに適していると言えます。
これらの理由から、強健で増やしやすい交配種が選ばれ、結果的に「チワワエンシス」の名前で店頭に並ぶことが多くなっているのです。
ラベルはあくまで「参考程度」に
大量生産・大量流通が基本の100均では、品種の厳密な管理が難しい場合があります。生産者側で誤った名前が付けられたり、卸売業者が便宜的に名前を付けたりすることもあるため、ネームプレートの名前が必ずしも正しいとは限りません。購入する際は、品種名に過度な期待はせず、「見た目が気に入った子」を選ぶのが良いでしょう。
100均苗との上手な付き合い方
では、100均の苗は買うべきではないのでしょうか?決してそんなことはありません。むしろ、品種名にこだわらなければ多くのメリットがあります。
メリット
- 安価で手に入る:何よりの魅力です。気軽に多肉植物ライフをスタートできます。
- 人気品種の可能性:もし桃太郎であれば、それはそれで非常に人気のある優良な園芸品種です。むしろお得と言えるかもしれません。
- 育てる楽しみ:品種が何であれ、目の前の植物を元気に育てるという園芸の基本的な楽しみを味わえます。
「この子、本当は誰なんだろう?」と推理しながら育てるのも、100均苗ならではの楽しみ方ですよ!春になって花が咲いた時に、「やっぱり桃太郎だった!」とか「あれ、意外な花が咲いた!」とか、答え合わせをするのもワクワクします。
最終的に本物かどうかは、後の項目で解説する「花」で確認するのが最も確実です。品種名に囚われず、一つの個性としてその苗との出会いを大切にすることが、100均苗と上手に付き合っていくための秘訣と言えるでしょう。
なぜ栽培が難しいと言われるのか

チワワエンシスは「栽培が難しい」という声をよく聞きます。その理由は、前述の通り、この植物が日本の気候とは異なる乾燥地帯の原種であることに起因します。
特に難しいとされるのが「夏越し」です。日本の夏は高温多湿で、チワワエンシスにとっては最も過酷な季節。この時期に株が蒸れてしまい、根腐れを起こして枯れてしまうケースが後を絶ちません。栽培を成功させるには、以下のポイントが重要になります。
栽培のポイント
- 風通し:とにかく風通しの良い場所に置くことが最優先です。サーキュレーターを使うのも有効な手段といえます。
- 水やり:夏場は断水気味に管理します。夕方以降、土が完全に乾いているのを確認してから、葉にかからないように土の表面が軽く湿る程度に与えるのがコツです。
- 遮光:強い直射日光は葉焼けの原因になります。特に西日は避け、30%~50%程度の遮光ネットの下で管理するのが理想的でしょう。
原種はデリケートな品種が多いですね。逆に言えば、これらのポイントを押さえて上手に育てられれば、それは栽培者としての自信にも繋がりますよ!
これらの理由から、特に初心者にとっては栽培のハードルが少し高く感じられるかもしれません。しかし、性質を理解して環境を整えてあげれば、元気に育てることが可能です。
意外と知らない寿命はどのくらいですか?

チワワエンシスの寿命について、「何年生きる」という明確な答えはありません。植物学的には「多年草」に分類され、これは適切な環境で管理すれば、理論上は何年も、場合によっては数十年と生き続けることができる性質を持っていることを意味します。
しかし、これはあくまで理想的な環境下での話です。実際の栽培では、さまざまな要因によってその寿命は大きく左右されます。
寿命を縮めてしまう主な要因
チワワエンシスの寿命を縮める原因のほとんどは、栽培環境と管理方法にあります。
- 環境の変化によるストレス
- 夏越し・冬越しの失敗: 最も多い原因がこれです。日本の高温多湿な夏は根腐れを引き起こしやすく、冬の厳しい寒さや霜は株に致命的なダメージを与えます。これらを乗り越えられずに枯れてしまうケースが後を絶ちません。
- 日照不足: 日光が足りないと、茎が間延びしてひょろひょろになる「徒長(とちょう)」が起こります。徒長した株は見た目が悪いだけでなく、病気への抵抗力が弱まり、結果的に寿命を縮める原因となります。
- 病害虫の発生 カイガラムシやアブラムシなどの害虫に養分を吸われたり、根腐れ病などの病気に感染したりすると、株は一気に弱ってしまいます。早期発見・早期対処が重要です。
株も「老化」する
人間と同じように、チワワエンシスも年数を経ると「老化」していきます。長年育てていると、以下のようなサインが見られることがあります。
- 茎の下の部分が硬く茶色くなる「木質化(もくしつか)」
- 新しい葉が小さくなる、または葉数が増えにくくなる
- 子株が出にくくなる
- 根の張りが悪くなる
これらの老化現象が直接の死因になるわけではありません。しかし、株全体の活力が低下するため、病気にかかりやすくなったり、環境の変化に耐えられなくなったりと、寿命を終える間接的な引き金になるのです。
寿命を延ばす秘訣は「株の更新(仕立て直し)」
では、どうすればチワワエンシスの命を長く楽しむことができるのでしょうか。その答えが「株の更新」、いわゆる「仕立て直し」です。
老化が見られたり、株の形が崩れたりしてきたら、思い切って茎をカット(胴切り)したり、元気な葉を葉挿しにしたりすることで、新しい株を作り出すことができます。これは、単に株を増やすだけでなく、元気な部分から新たなスタートを切らせる「若返り」の作業でもあります。
一つの株を何十年も同じ姿で維持するのは困難ですが、このように定期的に仕立て直しを行うことで、その株が持つ遺伝子(命)を半永久的につないでいくことが可能です。つまり、チワワエンシスの寿命は、育て主のお手入れ次第で無限に延ばすことができる、と言えるかもしれません。
チワワエンシスの偽物?その見分け方を解説

- 最終的な見分け方は?花で判別する
- 花芽が上がる時期まで待つのが確実
- 黄色い花の疑惑は花うららの可能性
- コロラータと桃太郎の違いは何ですか?
- 偽物と噂されるルビーブラッシュとは
最終的な見分け方は?花で判別する

チワワエンシスと、それに似た桃太郎などの交配種を最も確実に見分ける方法は「花」を確認することです。葉の形や爪の色は、生育環境や季節、個体差によって大きく変化するため、見た目だけで100%正確に判断するのはプロでも困難を極めます。
しかし、植物の「花」の形質は遺伝的に強く固定されており、簡単には変化しません。だからこそ、花は品種を同定するための最も信頼できる指標となるのです。
- チワワエンシス(原種)の花:細長く、スリムな形をしています。色は赤みがかったピンク色が特徴です。
- 桃太郎(交配種)の花:チワワエンシスに比べて短く、太いベル(釣鐘)型をしています。
この違いは一目瞭然です。もしお手持ちの株に花が咲いたら、ぜひその形を観察してみてください。それが、あなたの育てている多肉植物の正体を教えてくれるはずです。
花芽が上がる時期まで待つのが確実

前述の通り、花での判別が最も確実ですが、そのためには当然ながら花が咲くのを待つ必要があります。チワワエンシスの花芽が上がるのは、主に春の生育期です。
購入したばかりの小さな苗の場合、花が咲くまでには1年以上、場合によっては数年かかることもあります。これは、株がある程度成熟しないと花を咲かせる体力がつかないためです。つまり、見分けるためには根気強い観察が必要ということです。
成長点から花芽が出たら要注意
チワワエンシスは、株の中心にある「成長点」から花芽を出すことがあります。この場合、花が咲き終わった後に成長点がなくなり、株がそれ以上大きくならない「生長点喪失」という状態になることがあります。脇から子株が出てくることも多いですが、親株の形は大きく崩れてしまうため、あらかじめ理解しておく必要があります。
黄色い花の疑惑は花うららの可能性

「うちのチワワエンシス、黄色い花が咲いたんだけど…」というケースも時折報告されます。しかし、本来のチワワエンシスの花は赤みがかったピンク色です。
もし黄色い花が咲いた場合、その株はチワワエンシスではなく、別の品種である可能性が非常に高いと考えられます。最も可能性が高いのは「花うらら(はなうらら)」という普及種です。花うららは見た目がチワワエンシスに似ており、黄色い花を咲かせるという特徴が一致します。
市場では、生産者や販売者の誤認によって、違う名前で流通してしまうことが稀にあります。花の色が違っても、それはそれで新しい出会い。がっかりせずに、その子の個性として可愛がってあげてくださいね。
このように、花の色も品種を特定する上で重要な手がかりとなります。
コロラータと桃太郎の違いは何ですか?

チワワエンシスの偽物疑惑を語る上で、避けて通れないのが「桃太郎」と、その片親とされる「コロラータ」の存在です。これら3者は見た目が似ていますが、明確な違いがあります。ここで、それぞれの特徴を表にまとめてみましょう。
項目 | チワワエンシス | 桃太郎 | コロラータ |
---|---|---|---|
分類 | 原種 | 交配種 (チワワエンシス × コロラータと言われる) | 原種 |
葉の特徴 | やや卵型でコンパクト。爪は小さく鋭い。 | 葉の肩が丸みを帯びる。爪が大きくはっきりしている。 | 葉が長く、大型化しやすい。白い粉が多い。 |
花の特徴 | 細長い形の赤ピンク色の花 | 短く太いベル型の花 | チワワエンシスに似た細長い花 |
成長 | 比較的小型に育つ | チワワエンシスより大きくなりやすい | 大型に育つ品種が多い |
このように、桃太郎はチワワエンシスの可愛らしさとコロラータの強健さを併せ持ったハイブリッド品種です。特に花を見れば、チワワエンシスやコロラータ(原種)とは明らかに違うことが分かります。葉の形で判断するのは難しいですが、これらの違いを知っておくと、より深く多肉植物の世界を楽しむことができます。
偽物と噂されるルビーブラッシュとは

「チワワエンシス ルビーブラッシュ」という名前も、混乱を招く一因となっています。この名前には、実は2つの側面が存在します。
- 本物の E. chihuahuaensis ‘Ruby Blush’
これはドイツのケーレス社(Köehres)などが扱う、チワワエンシスの正真正銘の原種の一タイプです。産地名(例: Cusarare)が付記されることもあります。非常に美しく、希少価値が高いですが、栽培は原種のため難しいとされています。 - 桃太郎に似たハイブリッド種
一方で、海外の農場で作られた桃太郎にそっくりな交配種が、「チワワエンシス ルビーブラッシュ」という名前で流通しているケースがあります。これは「チワワエンシス」としては偽物と言えます。姿や大きさ、強健さから、おそらく桃太郎と同じような交配式のハイブリッドであろうと推測されています。
つまり、「チワワエンシス ルビーブラッシュが桃太郎の本当の名前」という噂は間違いです。本物の原種と、それに似せて名付けられた交配種が混在しているのが現状です。信頼できる販売者から購入することが、本物を手に入れるための鍵となります。
まとめ:チワワエンシスの偽物を見極めるポイント

これまで解説してきた内容を基に、チワワエンシスの偽物疑惑に終止符を打ち、本物を見極めるためのポイントをまとめます。ぜひ、今後の多肉植物選びの参考にしてください。
- チワワエンシスはメキシコ原産の原種である
- 桃太郎はチワワエンシスとコロラータの交配種とされる
- 最も確実な見分け方は花形で細長いのがチワワエンシス
- 桃太郎の花は短く太いベル型である
- 100均のものは桃太郎や他の交配種の可能性が高い
- 葉の形や爪の色は環境で変わるため判断基準になりにくい
- 栽培が難しいと言われるのは高温多湿に弱い原種の性質のため
- 寿命は決まっておらず多年草として長く生きる
- 旧タイプとはより原種に近い特徴を持つ個体の通称