キラキラとした見た目が宝石のようなドロサンテマム。その魅力に惹かれて育て始めたものの、一般的な多肉植物と同じ感覚で管理して「枯れる」経験をした方は少なくないでしょう。特に人気の種類であるグロボーサムの育て方や、小さな米粒の育て方で悩んでいませんか。
実は、この植物のドロサンテマム 育て方には特有のコツがあり、特に水やりの方法は他の多肉とは一線を画します。乾燥に強いと思いきや水切れに弱く、かといって過湿も苦手。カット苗の育て方でなかなか発根しなかったり、挿し木や種まきでの増やし方に挑戦しても上手くいかなかったり。
気づけばヒョロヒョロと徒長させてしまった、という声もよく耳にします。この記事では、なぜドロサンテマムが難しいと感じるのか、その理由と具体的な管理方法を徹底的に解説します。
この記事のポイント
- ドロサンテマム特有の水やりの秘密
- 代表的な種類ごとの管理ポイント
- 挿し木やカット苗を成功させる具体的な手順
- 徒長や根腐れを防ぐための環境づくり
ドロサンテマム 育て方の基本と特徴

ドロサンテマムを上手に育てるためには、まずこの植物が持つユニークな性質と、基本的な管理ルールを理解することが不可欠です。近年人気を集める「グロボーサム」や「米粒」といった種類の特徴から、一般的な多肉植物とは全く異なる特殊な「水やり」の考え方、そして多くの人が失敗してしまう「枯れる原因」まで。
ここでは、あなたのドロサンテマムをキラキラと保つための、最も重要な基礎知識を徹底解説します。
ドロサンテマムの主な種類を紹介

ドロサンテマムは、南アフリカの西ケープ州などを原産とするメセン(ハマミズナ科)の仲間です。この植物の最大の魅力は、葉や茎の表面にある「乳頭(パピラ)」と呼ばれる透明な粒々。これが光を乱反射し、まるで宝石や氷砂糖のようにキラキラと輝きます。
近年、特に人気を集めているのは、葉が小さく密集する「つぶつぶ系」と呼ばれるタイプですが、ほかにも多様な種類が存在します。ここでは代表的な品種の特徴を整理します。
品種名(流通名) | 特徴 | 管理のポイント |
---|---|---|
グロボーサム | 人気の火付け役。休眠期はまん丸の葉がカラフルに色づき、生長期は俵型に伸びる。 | 基本的な育て方に準じる。高温多湿と寒さに特に注意。 |
米粒(クリプランド) | グロボーサムによく似るが、葉がより小さいとされる。 | 管理方法はグロボーサムとほぼ同じ。水切れに注意。 |
エブルネウム | 古くから流通する品種。幹が太くなりやすく比較的丈夫。春に美しい花を咲かせる。 | つぶつぶ系よりは管理しやすいが、基本的な注意点は共通。 |
スキルパッド | やや棍棒型の葉を持ち、匍匐性(ほふくせい)で横に広がりやすい。 | 寄せ植えのアクセントにも使われる。 |
フロリバンダム | マツバギクに近い仲間で、地面を覆うように広がる(グランドカバー)。耐乾燥性が高い。 | 庭植えにも使われることがあるが、過湿と寒さには注意が必要。 |
キラキラの正体「乳頭(パピラ)」
このキラキラした粒は、単なる装飾ではありません。これは「蓄水細胞」とも呼ばれ、原産地の朝霧や夜露といった空気中のわずかな水分を集め、効率よく葉の表面から吸収するための高機能な器官です。
グロボーサム 育て方のポイント

近年、ドロサンテマムという名前を一気に広めた立役者が、この「グロボーサム」です。その魅力は、まるで宝石やビーズのように色づく、まん丸で小さな葉にあります。この可愛らしい姿を維持し、健康に育てるための最大のポイントは、「日本の過酷な夏と冬をどう乗り切るか」という点に集約されます。
なぜなら、グロボーサムの原産地である南アフリカの気候は、暑くても30℃を超えず、寒くても5℃を下回らない、年間を通して非常に穏やかな環境だからです。さらに重要なのは、日本の梅雨や夏のような「高温多湿」の時期が存在しないこと。このため、日本の気候はドロサンテマムにとって非常にストレスがかかる環境なのです。
この生育環境の違いを理解した上で、季節ごとの管理ポイントを押さえましょう。
春と秋(成長期)の管理
気温が安定している春と秋は、グロボーサムにとって最も活発に成長できる季節です。この時期は、午前中の日光がしっかりと当たるような、日当たりと風通しの良い場所で管理してください。水やりも活発になるため、後述する霧吹き(葉水)での湿度維持と、土への水やり(または腰水)を組み合わせて、水切れさせないように注意します。
夏(休眠期・最重要注意点)の管理
日本の高温多湿は、グロボーサムにとって最大の敵です。梅雨入りと同時に、管理場所を切り替える必要があります。「雨ざらし厳禁」そして「風通しの確保」が絶対条件となります。
具体的には、直射日光が当たらず、雨も完全に避けられる軒下や、風通しの良い明るい日陰に移動させましょう。この時期に水をやりすぎたり、風通しが悪い場所に置いたりすると、株元が蒸れて一瞬で腐敗(ジュレ)してしまうため、細心の注意が求められます。
冬(休眠期)の管理
前述の通り、原産地は氷点下にならないため、寒さも大敵です。耐寒性は強いとは言えず、安全ラインは最低気温5℃程度と考えましょう。霜に一度でも当たると深刻なダメージを受けるため、天気予報を確認し、最低気温が5℃を下回るようになる前に、室内の明るい窓辺などに取り込むのが最も安全です。
知っておきたい「姿の変化」という誤解
購入時によく見られる「まん丸でカラフルな葉」は、多くの場合、休眠期や水切りなどのストレス下で引き締まった姿です。
春や秋の成長期に入り、水と日光を十分に吸収し始めると、これらの葉は「緑色になり、少し縦長の俵型」に変化します。これは「徒長」ではなく、本来の健康な姿に戻っている証拠です。ここで「徒長した!」と勘違いして慌てて水を切ってしまうと、逆に水切れで枯れる原因となるため注意してください。
人気の米粒 育て方と管理方法

グロボーサムと並んで「つぶつぶ系ドロサンテマム」として絶大な人気を誇るのが、この「米粒(クリプランド)」です。その名の通り、グロボーサムよりもさらに葉が小さく、米粒が集まったような愛らしい姿が特徴となります。
基本的な管理方法は、高温多湿を嫌い、寒さに弱いという点でグロボーサムに準じます。しかし、栽培する上では、米粒はグロボーサム以上に「水切れに対して敏感である」と意識する必要があります。
なぜならば、葉や株全体がよりコンパクトであるということは、それだけ株自体に蓄えられる水分量が絶対的に少ないことを意味するからです。そのため、少しの水切れが、すぐに株全体の乾燥ダメージにつながってしまいます。
エケベリアやセダムといった一般的な多肉植物の管理法、つまり「土が完全に乾いてから、さらに数日待って水を与える」といった乾燥気味の管理は、米粒にとっては致命傷になりかねません。ドロサンテマムの細かな根は一度乾燥ダメージで枯死してしまうと、その後の吸水機能が停止し、回復が非常に困難になるのです。
したがって、成長期である春と秋は、土が完全に乾ききる一歩手前のタイミングで水を与えるか、あるいは高頻度の「葉水(霧吹き)」や定期的な「腰水(こしみず)」を積極的に併用し、根系を乾燥させすぎない適度な湿度を保つ工夫が求められます。
水切れのサインを見逃さないでください
最も分かりやすい水切れのサインは、葉のハリです。水分が不足し始めると、あのキラキラとした葉のハリがなくなり、シワシワとしぼみ始めます。このサインが出たら、すぐに水分補給が必要です。このしぼんだ状態が長く続いてしまうと、根が深刻なダメージを受け、そのまま枯れてしまうリスクが非常に高くなります。
霧吹きが鍵?特殊な水やり方法

ドロサンテマムの育て方で最も重要なのが、この「水やり」です。多肉植物を始めたばかりの頃、「霧吹きでの水やりは無力である」と学んだ方も多いでしょう。しかし、ドロサンテマムはその常識が通用しない、例外的な少数派です。
なぜなら、前述の通り、葉の表面にあるキラキラの粒(乳頭)は、空気中の水分をキャッチして直接吸収する機能を持っているからです。原産地である南アフリカの西ケープ地方は、雨こそ少ないものの湿度が高く、朝晩には頻繁に霧が発生します。ドロサンテマムは、その霧を葉で受け止めて水分を補給するように進化してきました。
もちろん根からも水を吸いますが、この「葉からも給水できる」という特性を活かすことが、栽培成功の鍵となります。
推奨される水やり管理
- 葉水(霧吹き): 季節を問わず、霧吹きで葉に直接水分を与える「葉水」が極めて効果的です。乾燥する時期は、毎日か数日に1回の高頻度で行います。
- 根への水やり(腰水): 葉水だけでは量が不足しがちなため、成長期の春・秋は、鉢底から水を吸わせる「腰水」をプラスするのがおすすめです。根が想像以上に長く伸びるため、深めの鉢も有効です。
多肉植物の管理に「霧吹き」を復活させる時が来ました。ただし、霧吹きだけで生きているわけではなく、あくまで「根からの給水」を補完する役割です。特に日本の高温多湿な夏場は、霧吹き後の蒸れに注意し、サーキュレーターなどで空気を動かす対策が必須です。
枯れる原因は水切れと高温多湿

ドロサンテマムが「枯れる」場合、その原因は主に二つに集約されます。それは「過湿による根腐れ(蒸れ)」と「水切れによる乾燥枯れ」です。この相反する二つの要因が、管理を難しくさせています。
多くの多肉植物と同様、ドロサンテマムも土が常にジメジメしている状態には耐えられません。特に日本の高温多湿な梅雨から夏にかけては、水やり過多と風通しの悪さが組み合わさると、一瞬でジュレて(腐って)しまいます。
一方で、「多肉植物だから乾燥に強いはず」という思い込みから水やりを控えすぎると、細かな根が乾燥ダメージを受け、株全体が水分を吸い上げられなくなって枯死します。これは、一般的な多肉植物よりも顕著に起こる現象です。
特にネット通販などで「抜き苗」を購入した場合、輸送中のストレス(蒸れや乾燥)で既にダメージを受けていることがあります。植え付けてもなかなか水を吸わず、そのまま枯れてしまうケースは、この根のダメージが原因であることが多いです。
実践的なドロサンテマム 育て方と管理

ドロサンテマムの基本的な性質を理解したら、次は「増やす」そして「美しく維持する」ための実践的な管理技術に進みましょう。
この植物は、特に「カット苗」からの育て方や「挿し木」において、他の多肉植物の常識が通用しない場面が多くあります。ここでは、購入した苗を確実に発根させるコツから、種まきでの増やし方、そして姿を乱す「徒長」を防ぐための具体的な日照管理まで、一歩進んだテクニックを詳しくご紹介します。
カット苗 育て方と発根のコツ

購入したカット苗(挿し穂)がうまく発根しない、あるいは植え付けた直後からみるみるうちにカリカリにしぼんでしまった、という悩みは、ドロサンテマムの栽培で最も多く聞かれる失敗例の一つです。これは、管理方法が間違っているのではなく、一般的な多肉植物の管理セオリーとは真逆のアプローチが求められるからです。
通常、エケベリアなどの多肉植物のカット苗は、「切り口を数日間しっかりと乾燥させ、カルス(保護膜)を作らせる」「乾いた清潔な土に挿す」「発根が確認できるまで水やりは控える」というのが鉄則です。しかし、ドロサンテマムの場合、このセオリー通りの管理を行うと、発根に必要な体力が残る前に苗自体が水切れを起こし、乾燥枯れしてしまう可能性が極めて高いのです。
これは、ドロサンテマムが持つ以下の二つの特性に起因します。
- 一般的な多肉植物に比べて乾燥に弱く、水切れを起こしやすい。
- 古い茎(木質化した部分)は吸水力が低く、カットしたばかりの新鮮な切り口は、発根前であっても積極的に水分を吸収する力がある。
つまり、ドロサンテマムを成功させるコツは「いかに乾燥させず、新鮮な切り口から水を吸わせ続けるか」にかかっています。
カット苗を成功させる具体的な3ステップ
- リフレッシュカットを行う
苗が手元に届いたら、まず茎の切り口を確認します。輸送中に乾燥して固くなっていることが多いため、清潔なハサミで茎の先端を数ミリ切り戻し、新鮮な吸水口(切り口)を作ってください。苗がすでにしぼみ始めている場合でも、この作業は有効です。 - 乾燥させず「すぐ」挿す
切り口を乾燥させる時間は必要ありません。あらかじめ湿らせておいた清潔な用土(挿し木・種まき用土や、赤玉土・鹿沼土の細粒など)に、すぐに挿します。深く植える必要はなく、切り口が土に触れて安定する程度(5mm〜10mm)で十分です。 - 発根まで湿度を保ち続ける(最重要)
植え付けた後は、絶対に土と苗をカラカラに乾燥させないでください。土の表面が乾かない程度に水やりを続けつつ、葉の潤いを保つために高頻度の霧吹き(葉水)を行います。葉からも水分を補給させ、発根を待つ戦略です。
「カットしてすぐに湿った土に挿す」という方法は、確かに雑菌による腐敗(ジュレ)のリスクを高める行為です。しかし、ドロサンテマムにおいては、腐敗するリスクよりも、乾燥して枯死するリスクの方がはるかに高いと言えます。
もちろん、前提として清潔なハサミと新しい用土を使用することは絶対条件ですが、戦略としては「腐敗を恐れて乾燥させる」のではなく、「乾燥枯れを防ぐために湿度を優先する」という判断が成功の鍵です
挿し木による簡単な増やし方

ドロサンテマムを増やす最も手軽な方法は「挿し木(枝挿し)」です。カット苗の管理方法を応用すれば、比較的簡単に増やすことができます。
適期は成長期にあたる3月〜10月ごろですが、高温多湿な真夏は避けたほうが無難です。できるだけ健康的でプリプリした状態の株から、穂先をカットします。茎が多少、木質化していても問題ありませんが、なるべく若い緑色の茎の方が発根しやすい傾向にあります。
カットしたら、前述のカット苗管理と同様に、そのまま清潔な用土に挿します。5mm〜10mmほど埋まれば十分です。重要なのはここからで、発根するまで水分を切らさないこと。霧吹きで湿度を保ち、葉からの水分吸収も助けてあげてください。しぼんできても、霧吹きを続けると持ちこたえることが多いので、諦めないことが肝心です。
挿し穂のサイズについて
検証によれば、非常に短い挿し穂(若い枝先)は最初の吸水力や発根率は高いものの、その後の水分不足などのトラブルに弱かったとされています。最終的な生存率が高かったのは、3cm〜5cm程度の長さがある挿し穂だったという情報もありますので、参考にしてください。
種まきから育てる手順と適期

ドロサンテマムは種まき(実生)で増やすことも可能です。自家受粉して種ができる品種もあるようですが、一般的には種子を入手して蒔くことになります。
発芽にはいくつかの条件があり、一般的な多肉植物の種まきとは少し異なる点に注意が必要です。
発芽の条件と手順
- 適期: 発芽適温が10℃〜20℃と冷涼な気候を好むため、日本の場合は春か秋が適期です。
- 用土: 清潔な多肉植物用土や種まき用の土を使用します。雑菌による失敗を防ぐため、熱湯をかけて消毒(冷ましてから使用)するのが最も確実です。
- 種まき: 種は非常に細かいため、重ならないように注意して土の上にパラパラと蒔きます(爪楊枝の先を湿らせて一粒ずつ置く方法もあります)。
- 覆土: 土は被せません(好光性種子)。
- 管理: 発芽まで絶対に乾燥させてはいけません。鉢を腰水につけるか、ラップや透明なフタをして「超多湿」状態を維持します。また、発芽初期は強い日差しに弱いため、明るい日陰で管理してください。
発芽までの期間
条件が揃えば数日で発芽することもありますが、発芽まで1ヶ月以上かかる場合もあるとされています。発芽条件(湿度・温度)を維持しながら、気長に待つ必要があります。
徒長させない日照と管理のコツ

「徒長(とちょう)」とは、主に日照不足が原因で、植物が光を求めて茎や葉の間隔が間延びしてしまう現象を指します。ドロサンテマムも例外ではなく、光が足りないとヒョロヒョロとした姿になってしまいます。
ドロサンテマムが必要とする光の強さは、感覚的には「エケベリアと同等か、それより少し弱め」です。暗い室内に置かれるハオルチア(250〜2,500 lux程度)よりは、はるかに強い光を必要とします。
春と秋の成長期は、午前中の直射日光が当たるような場所で、しっかりと日に当てて育てます。ただし、真夏の強すぎる直射日光は葉焼けの原因になるため避けてください。徒長の原因としては、日照不足のほかに「水のやりすぎ」も関係します。
具体的な照度の目安
ある栽培環境のレポートでは、ドロサンテマム棚の照度は8,000〜15,000 luxと計測されています。これはエケベリア棚(強め)の11,000〜16,000 luxに匹敵する光量であり、しっかりとした光が必要であることがわかります。
もし徒長してしまった場合は、伸びた部分をカットして(剪定して)、その穂先を挿し木にし、仕立て直すのが最も早い再生方法です。
総括:ドロサンテマム 育て方の鍵

- ドロサンテマムは南アフリカ西ケープ原産のメセンの仲間
- 葉のキラキラは水分を吸収する「乳頭(パピラ)」という器官
- 一般的な多肉植物の常識が通用しない育て方が必要
- 最大の失敗原因は「夏の高温多湿による蒸れ」と「水切れによる乾燥枯れ」
- 多肉植物だが乾燥に弱く水切れは厳禁
- 水やりは根からだけでなく葉からの給水(葉水)も重要
- 成長期の春と秋は霧吹きと腰水の併用が効果的
- 夏は雨が当たらない風通しの良い明るい日陰で管理する
- 冬は寒さに弱いため室内の明るい場所に取り込む(最低5℃目安)
- グロボーサムや米粒といった人気種は特に夏の管理に注意
- カット苗は切り口を乾かさず湿った土にすぐ挿す
- 挿し木やカット苗は発根まで湿度を保ち乾燥させない
- 種まきは適温(10-20℃)と超多湿環境が必要
- 日照不足は徒長の原因となるため春と秋はしっかり日に当てる
- 必要な光の強さはエケベリアと同等か少し弱めが目安